ちょっと薬に関する話でも書いてみようかと思います。
後発医薬品(ジェネリック)はご存知ですよね。
特許の切れた医薬品成分について、同一の成分を含むより安価な薬を後発医薬品と言います。
薬剤師をやっているとジェネリックという言葉はかなり浸透して来た感じはありますが、あまり良いイメージが無い場合もあるようです。
「他の薬局で薬剤師に勝手に後発品に変えられたんだ!」
「以前試したら効きが違う気がして・・・」
「品質が良くないんでしょ?先発品を希望します!」
・・・
色々な意見があるとは思いますが、なぜ薬剤師が必死に後発医薬品を勧めるのか簡単に説明しますね。
※私見が入ります点はご勘弁ください。私がここで書いていることが、他の薬剤師に聞いてみたら「そんなことは無いですよ」と言われてしまったらすいません。まだまだ未熟な薬剤師なので。
1、後発品の利用は未来の医療のため?
医療費が増大し続けています。
現状の保険制度が破綻するすると言われて久しいですが、実際に「破綻しないでしょう」と思っている方も多いかと思います。あくまでイチ薬剤師の私にとって、「〇年後に破綻しますよ!」とはとても言えませんが、色々なセミナーや診療報酬改定時の説明会で伺っていると、意外と喫緊の課題のようです。
このままでは推測ですが未来では
・医療費の負担が重くなり、大きな病気の際に気軽に受診できない、という事に?
・生まれながらの難病の方への助成制度も無くなり、年間数百万の負担も?
そうならないために国も様々な手を打っています。その中で薬剤師が関われる&恐らく効果のありそうな手段がジェネリック医薬品の推進です。ただし重要なのは年金と同様、今すぐに何か影響が出るというものでは無く、一番影響を受けるのは将来の若い世代という事だと思います。
先日、高齢女性の方とこんなお話をしました。
女性「後発品は品質が悪いんでしょ?どうせ負担は軽いから先発品で出して。」
薬剤師「今回は先生が後発品を選択されているのでこちらで勝手に先発品に、というのは出来かねます。医師の先生方が後発品を選択されるのも訳があります。一つは品質が安定して認めてくださっているという事。もう一つは医療費負担軽減のためです。」
女性「医療費は私は安いからいいでしょ?」
薬剤師「お子さんやお孫さんはいらっしゃいますか?その方々が大人になった時にも、現状の医療制度を受けられるよう、後発品の利用にご協力いただけませんか。」
女性「うーん、そういえば医療費のニュース見たわ」
薬剤師「〇〇様は1割負担なので、実際は残りの9割はどこかが負担しています。その際の先発品と後発品の負担の差は〇円です。一度後発品を試して頂いて、気になる事があればすぐに戻すよう医師に話してみますので如何でしょうか。」
女性「そんなに違うのね。それなら変えてみようかな」
ここまでスムーズに進むケースは稀ですが、別のお母さんはお子さんの事を考えて「絶対に先発品を使用する」と言っていました。本当にそれはお子さんのためになるのでしょうか。
調剤薬局の領収書を見たことはありますか。
ほとんどの方は3割負担かとは思いますが、実際7割はどこかから出ています。もし3000円掛かったとすれば総医療費は10000円です。薬剤師から「後発品にするとご負担は300円安くなりますよ」と言われたらどうしますか?
ここで「300円か、それくらいなら安心できる先発品にしようかな・・・」と思っているのであれば、総医療費が幾ら安くなるかを一度考慮頂ければと思います。この場合は加入している保険組合の負担は約700円負担が安くなります。その700円が未来のお子さんの健康のために使われるかも知れません。そう考えると「後発医薬品使ってみようかな~」と思いませんか。
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2、後発医薬品の品質は?AGって?
「そうは言っても後発品は問題が多いでしょ?」
そこも実はイチ薬剤師には何とも言えません。頑なに先発品しか出さない医師の方もいらっしゃいますし、ドンドン後発品に変えて良いむしろ何で変えないのかという先生もいらっしゃいます。
ただ、事実として
・大学病院でも後発医薬品を採用薬とするケース(大学病院の医師と薬剤部のお墨付きと言えます)が増えてきています。ちなみにある大学病院薬剤部では、湿布であれば貼った時の感触、シロップであれば味、軟膏であれば混合したときの安定性をしっかり確認してから承認するようです。
・後発医薬品もGMPと言う厳しい製造基準に適合した工場で生産されています。
それでも完全に信頼はできないという方もいるかも知れません。
そんな方には、数も限られており一般的に認知度はまだまだですがオーソライズドジェネリック(AG)と言うものもあります。これは簡単に言えば「先発医薬品メーカー公認のジェネリック」です。
例えばアレルギー薬の「アレグラ」は外資メーカーSが製造販売していますが、「フェキソフェナジン塩酸塩「SANIK」」はその子会社が販売しています。
このAGと言うのは「中身は先発品、価格は後発品」というものです。(一部を除き)製造工場は同じで、最後のパッキングの工程のみが異なるというケースが多いようです。医師からの処方箋でもAGがあるものは、積極的にAG指定で処方している場合が多いです。「医療費削減には協力したいけど、添加物でアレルギーを起こしたことがあり品質は心配」という方は薬局で「オーソライズドジェネリックであれば希望します」と言って頂ければ嬉しいです。
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3、後発医薬品だからこそできる事
こんなところまで読んで下さり本当にありがとうございます。
最後に後発品の良いところを挙げます。
後発医薬品のお陰で患者さんの薬の選択が増えたんです。
ある時、女性からお子さんが薬が苦手でなかなか飲ませられないという相談がありました。薬名は出しませんが、先発品は確かに苦いです・・・。
女性「苦みが強いようで、薬剤師からの勧めで色々な飲み物にも混ぜましたが飲めないです。ただ、医師からは必要な薬なので変えられないと言われています・・・。」
薬剤師「ジェネリックで若干味が改善されたと聞いています。取り寄せてみますので次回試してみますか?」
~次回調剤後(実は2社の後発品を取り寄せて薬局で味見して出しました)~
女性「後発品であれば飲めるようになりました。苦みが少ないみたいです。ずっと飲まなければならない薬だったので、飲みやすくなったのは助かります。」
という話がありました。
私たちにとって薬を飲むのは当然のことですが、お子さんにとって薬が「飲めること」は非常に重要です。
この話とは異なりますが、後発品メーカーも色々と工夫しており
・錠剤が小さく飲みやすい工夫がしてあったり
・保湿の薬で先発にはないスプレータイプ、泡タイプのものがあったり
・後発品の目薬の方が目に沁みにくかったと言って頂いたり
・剥がすのが痛いと言っていた貼り薬で、貼りやすい&剥がしやすい薬に変えて感謝されたり
本当に色々な良い面があります。
どうでしょうか?ジェネリック医薬品に関するイメージは少しは良くなりましたか?
もちろん良い面だけでは無いです。
上記とは違うジェネリックの湿布が貼りにくいとクレームがあったり、効きが弱い気がすると言われてしまったり、供給体制が不十分で在庫をすぐに用意できなかったり。
ただ、薬剤師も現状の医療の予算が限られていて、その中で皆さんの健康にどのように貢献するのが一番ベストなのか、というのを考えていると思います。(薬剤師の中にはとんでもない人もいますが)基本的には薬で健康を守りたい、一方で日本の医療費を何とかして削減したいと願っている人ばかりです。
もし今後処方箋を薬局に出す際、この薬局/薬剤師は信用できるかなと思ったら「後発品でお願いします」と言って頂けたらと思います。まだまだ知りたい方は、かかりつけの薬剤師に色々と聞いてみてください。
少しいつもと趣の異なる話ですいません。
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